服部正 研究室 ウェブサイト

甲南大学文学部人間科学科に所属する服部正(美術史、芸術学)のウェブサイトです。
アウトサイダー・アート、アール・ブリュット、障がいのある人の創作活動などを研究領域として、調査研究、著述、展覧会の企画などを行っています。

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ベルギー便り 01~Art et marges muséeのオープニング

2026年04月18日

2026年3月末から、約1年間の在外研究でブリュッセルに滞在しています。現地で見た障害のある人の表現やアウトサイダー・アート/アール・ブリュットに関する情報や雑感を、折に触れて紹介していきます。インスタでは写真を中心に簡単に、個人サイトのブログ欄では備忘録的にもう少し詳しく紹介します。

4月17日の18時から、ブリュッセルの「Art et marges Musée」で展覧会のオープニングがありました。1986年に開館したこの美術館は、アール・ブリュット、アウトサイダー・アートに特化した美術館で、4,500点を超える作品を所蔵し、刺激的な展覧会を開催しています。

今回の展覧会は、「le musée des musées(博物館のなかの博物館)」。動物園、植物園、天文台などの博物館の様々な形態をこの美術館のなかで再現するという趣旨で、同館のコレクションから選ばれた作品だけでなく、現代アートの作家の作品も借用して併置しています。たとえば、展覧会の冒頭は動物園がテーマで、動物を描いたアウトサイダー・アートや障害のある人の作品とともに、動物のはく製に包帯を巻いたPascal Bernierの作品などが展示されていました。

なかでも、宇宙をテーマとしたコーナーの大半を占めるMichel Goyonの展示は圧巻でした。Goyonは、2025年に同館が開催した回顧展でよく知られるようになった美術家で、美術学校出身ですがキャリアの途中からは美術界とは距離を置いて制作を行っています。

その他、ファッションをテーマにした展示では、日本でも何度か作品が展示されたことのあるベルギーのケネット・ラスモズンのニットの作品(奥の壁)も展示されていました。

オープニングは大盛況で、平日の夕方ですが、小さな美術館が人で溢れていました。展示を見た後は、ビールやソフトドリンクを購入して屋外の歩道で歓談の時間が続きました。ゲストが歩道を占拠していても、通りがかる人は特に苦情を言うわけでもなく、中にはこの賑わいに誘われるように展示を見ていく人もいます。美術館のオープニングが屋内に閉鎖するのではなく、日常の中に広がりながら語らいの場が自然とあることは豊かだと思いました。

そして、美術館からの帰路でふと路地を見ると、もう20時だというのに、夕日が建物を明るく照らしていました。ヨーロッパの夏は夜の訪れが遅いですが、まだ朝晩は肌寒い4月中旬でも、すでに暗くなるのは21時頃なのです。(サマータイムなので実際には20時ですが)。



余談としてちょっとお金の話。本日、地下鉄の年間パスをようやく入手しました。年間パスを購入するには市役所で長期滞在の申請が認定されていなければなりません。それが長い道のりでした。ブリュッセルの地下鉄は、市内郊外を含めた均一料金で、1回2.40ユーロです。日本円で400円以上ですが、1時間以内なら何度でも乗り替え自由です。年間パスは560ユーロで、これもかなり高額ですが1年間の通勤定期代と思うとまあ納得できる価格ではあります。そして、なんとこれが12歳以下の子どもは一切無料。12~24歳の学生は年間たったの12ユーロ(2300円程度)なのです。子育て支援、若者支援というならば、ぜひ日本の行政にもこれを見習ってもらいたいですね。少子化対策のためには、子育てが精神的にも経済的にも負担にならない社会が大切なのだと改めて思いました。