服部正 研究室 ウェブサイト

甲南大学文学部人間科学科に所属する服部正(美術史、芸術学)のウェブサイトです。
アウトサイダー・アート、アール・ブリュット、障がいのある人の創作活動などを研究領域として、調査研究、著述、展覧会の企画などを行っています。

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ベルギー便り 02~Art Brusselsとヘント現代美術館

2026年04月29日

4月23日から26日まで、ベルギー最大の現代美術のアートフェア「Art Brussels」が開催されました。会場となったBrussels Expoは、1935年のブリュッセル万博のメイン会場となったアール・デコ様式の大きな展示場です。
アート・バーゼルやフリーズ・ロンドンのようなグローバルな巨大フェアとは雰囲気も狙いも異なりますが、それでも出店ギャラリーは138を数えます。各画廊が推す若手作家を個展形式で紹介するブースが別に並んでいたり、協賛企業のコレクション展示があったり(フランスのワイナリーが自社のシャトーで展開している川俣正さんとのコラボレーションもブース展示されていました)、大きな空間にギャラリーブースでは紹介できない大きなインスタレーションが展示されていたりと、十分な見応えがありました。


『Art News』誌の記事によると、今年のフェアは出店数が前年より26も減って規模が縮小しているが、それは主催者が意図的に量から質への転換を図っているからだとしています。量を見ることよりもゆっくりと質の高い体験のできるアートフェアを目指すという姿勢は、過度のグローバリゼーションから距離を置き、地域に根差したサステナブルなアートフェアのあり方の探求でもあるのかもしれません。実際、ひとつひとつのブースも、通路も、飲食のできるスペースもゆったりと空間に余裕があり、あまり疲れを感じずに観覧することができました。
個人的には、やはりアール・ブリュットの動向が気になるところですが、アウトサイダー・アート/アール・ブリュット系の出店はヨーロッパにおけるアール・ブリュットの最大の画廊のひとつであるパリのクリスチャン・ベルストのみでした。その他の画廊の展示の中にも、ざっと見たところではアウトサイダー・アート系の作家の出展はほとんど見当たりませんでした。ベルギーには世界的に有名なアトリエがいくつもありますが、このフェアとはあまり関係がないようでした。アウトサイダー・アートのマーケット事情については、これからじっくり調査していきたいと思います。ブースにはベルスト氏もおられて、約10年ぶりにお話しすることができました。パリでの再会を約束しましたので、その際には改めて訪問記をアップします。ブースには、かつて兵庫県立美術館と広島市現代美術館でも大規模に紹介したアンナ・ゼマーンコヴァーの他、カルロ・ツィネッリのような古典的な有名作家だけでなく、キューバのミスレイディス・カスティージョ・ペドロソ、ドイツのユーリア・クラウゼ=ハルダー、そして日本のやまなみ工房の鵜飼結一朗さんも出展されていました。ベルスト氏が後ほど、美しく撮影した会場写真も共有してくださいました。鵜飼さんの手前がクラウゼ=ハルダーです。



余談として、4月23日に見学したヘント現代美術館(S.M.A.K.)を紹介します。地上階の常設展示室は展示替え中で、1階(日本でいう2階)のみの展示でしたが、4つの小規模な個展(うち一つは2人組のユニット)と企画展が開催されていて、見応え十分でした。お目当ての企画展は、「S.M.A.K. Bougeの10年」というもので、同館が継続的に行ってきた市民参加型のプロジェクトを総括するような資料展示です。ヘント現代美術館といえば、何んといっても1986年の「シャンブル・ダミ」展が有名ですが、市民と美術館をつなぐという伝統は今も強く意識されています。社会問題に対する感度の高い美術館としても有名な同館の企画らしく、これまで行われてきたプロジェクトも、難民経験者、同性愛者、認知症高齢者、障害者などと協働で行われたものが多く含まれていました。詳しくは同館のウェブサイトをご覧ください。