服部正 研究室 ウェブサイト

甲南大学文学部人間科学科に所属する服部正(美術史、芸術学)のウェブサイトです。
アウトサイダー・アート、アール・ブリュット、障がいのある人の創作活動などを研究領域として、調査研究、著述、展覧会の企画などを行っています。

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民族藝術学会 臨時総会と対話フォーラム

2019年06月26日

6月15日に、私が所属する民族藝術学会の「臨時総会と対話フォーラム」が大阪大学で開催されました。学会誌の大幅なリニューアルを中心とする学会改革の方針についての対話のための会合でした。対話フォーラムでは、最初に学会会長で国立民族学博物館館長の吉田憲司さんが「民族藝術学の新たな展開に向けて」と題して問題提起を行いました。吉田会長のお話は、対象を他者として固定化する「民族芸術」というカテゴリーは設定すべきではないが、人類のあらゆる社会に創造的な営みが存在することを考えれば、グローバル化した現代社会においては、西洋中心主義を脱却しきれていない「芸術学」の枠組みを超えて、人類の普遍的な営みとしての芸術現象を考究する学としての「民族芸術学」の潜在的可能性はかつてないほどに大きいという趣旨のものでした。それを受けて、学会誌『民族藝術』の名称変更が提案・承認され、学会の向かうべき方向について参加者全員による長時間にわたる活発な議論が交わされました。リニューアルされた学会誌は、2020年3月末に発行の予定です。どうかご注目ください。

「山沢栄子 私の現代」展(西宮市大谷記念美術館)

2019年06月06日

ゼミで西宮市大谷記念美術館で開催中の展覧会「山沢栄子 私の現代」を見学しました。団体見学のメリットは、美術館のスタッフ(学芸員の場合もあればボランティアの場合もある)の方から展示の解説をしていただけること。今回も、展覧会を企画した学芸員の池上司さんが、最初に10分ほど展覧会の見どころ解説をしてくださいました。また、見学の最後には学生からの質問に答える時間も取ってくださいました。展覧会は、丹念に作り込まれた見応えのあるもので、じっくりと展示を読み解くと山沢栄子の色や形へのこだわりがよく伝わってきます。学生は時間が足りないと閉館間際まで熱心に鑑賞し、とても充実した見学会になりました。

ちなみに、学生に課したレポートの課題は以下の通り。

(1)展覧会の構成にはどのような特徴がありますか。500字程度で説明してください。

(2)展覧会の出品作品の中から、特に印象に残ったものを2点選び、それぞれどのような作品かを客観的に説明したうえで、両者の違いや共通点など、比較することによって分かる山沢栄子の作品の時代による変化や、作品に込められた意図などを1000字程度で論じてください。

さて、学生たちはどのようなレポートを書いてくれるのか、楽しみにしています。

はじめまして。

2019年06月04日

思うところあって、個人サイトを立ち上げてみました。最大の目的は、調査・整理した作品のデータベースを公開することです。諸権利等の制約で現状では公開できないデータを蓄積しておき、機が熟したら公開するための格納場所でもあります。私が研究領域としている障害者の創作活動は、社会事業的な機能を持つ展覧会事業は盛んに行われる一方、その基盤となる基礎的な作品調査はあまり進んでいません。そもそも、作品の基礎調査に興味のないまま展覧会を開催する企画者すら少なくありません。個人でできることは限られていますが、縁あって自分が調査することになった作品だけでも、基礎資料を公共のものにしたいと考えました。障害者の創作活動における展覧会事業と基礎資料調査の関係については、いずれ稿を改めてどこかで考えたいと思っています。

サイトを立ち上げたもう一つの目的は、自身の活動を整理して振り返ることです。どこかで拙いお話をさせていただいたり、駄文を載せていただいたり、あるいは展覧会に関わらせていただいたりと、様々な活動をさせていただいていますが、それを統合的に確認できる場所がなく、不便を感じていました。論文と学会発表は業績として残りますが、たとえば何かの公募展で審査をしたとか、トークイベントに参加したとか、そうした活動の記録をたどるには、過去の手帳をさかのぼらなければならず、アナログで時間のかかる作業が必要でした。これを機に、そのような活動をすべてこのサイトで一望できるようにしたいというのが、もう一つのねらいです。記録の整理は未完成ですが、徐々にデータを追加していきたいと思います。

このブログのページを作るかどうかは迷いましたが、見学した展覧会の感想など、備忘録的に使おうかと思っています。大学で私が担当する大教室の講義では、授業の最初に5分ほどお勧めの展覧会や面白かったイベントなどについて話すことがあるのですが、それもその場限りで積み重ねがないので、このブログと連動的に運用できないかと考えています。とはいえ、それほど頻繁に更新できるとは思えませんので、最初からあまり目標を高く設定せず、少しずつ書き留めて行きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。